K-TUNES RACING

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GT WORLD CHALLENGE ASIA 2023 GT3 Report
2023.7.15-16 鈴鹿サーキット
歯車がかみ合うことなく進んだ鈴鹿
GT3もクラッシュによりリタイヤ

全6大会で開催される今シーズンのGTワールドチャレンジASIA。その第3大会が7月15日(土)〜16日(日)、鈴鹿サーキットで行われた。日本国内のレースに参戦するK-tunes Racingとしては2大会目となる。

そのレースウィーク、練習走行で大きなアクシデントが発生した。GR Supra GT4に乗る野上昌範選手が単独クラッシュ、マシンは大きなダメージを負ってしまった。左フロントと右リアが大きく破損してしまい、走行不能に。ドライバーに大きなケガがなかったのが幸い、と思えるほどのクラッシュだった。GR Supra GT4のマシン修復はできず、今回の鈴鹿大会の参戦はキャンセルせざるを得なかった。
野上選手と、チームメイトである藤井大温選手ともに、岡山国際サーキットでのOKAYAMAチャレンジカップでレースデビューし、腕を磨いてきた。そのため他のサーキットでの走行経験がほとんどない。そして今シーズンのGR Supra GT4参戦が決まった時に「鈴鹿を走ることができる」「鈴鹿でレースができる」ことが何より楽しみであると、2人ともが語っていた。
晴れの舞台となるはずだったのだが参戦はキャンセル。しかしここでチームオーナーでもある末長一範選手が、藤井選手に対してGT3のシートを譲ることを決めた。「せっかく楽しみにしていた鈴鹿ですから、走らずにこのまま帰るというのもどうかと。ボクはインタープロトで鈴鹿でレースをした経験がありますから、このコースの面白さというのも知っているので、藤井選手に走ってもらおうということになりました。GT3に乗ることで、また見えてくる部分もあると思うので、ドライバーとしてスキルアップできると思います」と、エントリー変更を終えてリラックスした末長選手は経緯を答えてくれた。
通常であればケガなどドクターストップのような要件がなければレース直前にエントリーの変更はできないのだが、GTワールドチャレンジASIAはジェントルマンのレースだけに、変更は難しくなかった。
画してLEXUS RC F GT3をドライブするのは、藤井選手と新田守男選手のコンビネーションとなった。

レースが始まる前日の金曜日、藤井選手はRC F GT3を走らせて、少しずつ習熟していった。市販車ベースの部分が色濃いGT4に対して、モノコックやフロントグリルなどを除いてほぼ専用設計のGT3では、レーシングマシンとしての純度が全く異なる。エンジンパワーはそう大きく変わらないが、マシンの幅は広く、タイヤのグリップレベルも高い。
「走りやすいですね。GT4は市販車っぽくてフラフラしているんですけど、GT3はカチッとしていて運転しやすいです。鈴鹿のコースがRC Fに合っているというのもあると思うんですが、走っていて楽しいです」と藤井選手は興奮気味に語ってくれた。
とはいえ、初のGT3であり、初の鈴鹿である。それほど簡単ではない。この日のベストタイムは2分8秒台で、新田選手に対して約5秒のタイム差があった。しかし着実にタイムを削っていっており、ペースは走るほど良くなっており、レースに向けて一歩一歩前進していた。
新田選手は2分3秒台をマーク。プラクティスで10番手のタイムであり、やはり鈴鹿でのRC F GT3の速さをしっかりと引き出していた。マシンのコンディションは良さそうで、前戦から1ヶ月を経て、ピレリタイヤの特性を含めて、セットアップの進化もあるようだ。
だが土曜日の朝、公式予選が始まる前、藤井選手はかなり緊張した表情を見せていた。「今回はGT4の件もあるし、まずマシンに少しずつ慣れる、そして最後まで安全に走りきる、というのが目標です」とコメントしてくれた。前戦のGT4デビューレースでも緊張してはいたが、今回はまた違ったプレッシャーもあったに違いない。

公式予選はドライバーに15分ずつ与えられる。まずはジェントルマンドライバーである藤井選手がタイムアタックに向かう。タイヤをウォームアップさせアタックラップに入っていく。その周回の終わり、シケインでスピン。逆向きにマシンを停めてしまった。
しかし、その直前のタイミングでS字で2台のマシンがコースアウトし、予選は赤旗中断となった。
仕切り直しとなった予選、藤井選手はやや慎重なのか、タイムが伸びない。結局2分11秒680で33台中32位となった。これが土曜日の第1レース、第5戦のスターティンググリッドとなる。
続く新田選手の公式予選でもアグレッシヴなドライバーは出現。ウォームアップを終えたところで130Rでのクラッシュで赤旗中断となった。残り8分での予選再開となり、あまり時間的な余裕はない。最初のアタックで2分6秒922とし、2回目のアタックでは2分2秒105までタイムを上げた。さらにタイムリミット直前の最後のアタックで良いペースで走行していたものの、デグナーでコースオフしたマシンが停まり赤旗へ。予選はそのまま終了となってしまった。
予選順位は21位で、もし最終アタックが最後まで走りきれれば、10くらいのポジションアップは可能だっただけに、残念な結果といえるだろう。日曜日の第2レース、第6戦では真ん中くらいの位置からのスタートとなる。

午後の決勝レース、第5戦。天気はやや雲が増えたことで陽差しが遮られ、気温は30℃と予想よりも低めだった。スタートドライバーは藤井選手で、スタートから25分から35分の間に新田選手にドライバー交代できる。前を走るマシンとは予選タイムで約3秒もの差があるのだが、レースではどうなるか判らない。
31番手からのスタートとなった藤井選手だが、まだローリングスタートに慣れていないのか、やや遅れ気味となった。しかも、そのオープニングラップ、S字でコースオフしてクラッシュしたマシンを避けることでタイムロスをし、少しロスしてしまう。だがレースはそのままセーフティカーとなり、ここまでのロスタイムは帳消しになった。2台がクラッシュしたため、順位は29位へと繰り上がっていた。
ややマシン回収に手間取り、セーフティカーが解除されたのは6周目。再スタートが切られてマシンたちは本来の力を取り戻したかのように、レーシングスピードに復帰した。藤井選手は2度目のスタートでもやや遠慮気味で、前車との距離は出来ていた。マシンに慣れることも含めて、直前にマシンが居ないほうが気が楽に違いない。すでにレースは14分を過ぎていて、あと10分ほど、つまり5周で新田選手へとバトンタッチが可能だ。
軽快にS字を走り抜け、逆バンクを登っていった。しかしデグナーカーブの先ではコースオフしたマシンが砂煙を巻き上げ、混乱した状況になっていた。藤井選手はコースオフしたマシンがコースへと戻ってくるのが見え、それを避けるためにラインをイン側へと変えようとした。しかしマシンはバランスを崩してスピン、イン側のガードレールへフロントノーズを当てて停まった。

デグナーカーブは立体交差直前の連続する右コーナーで、コーナーはタイトなのにスピードは高く、それでいてランオフも広くない鈴鹿の難所のひとつ。それだけに藤井選手もアクシデントを目にした瞬間に、強いプレッシャーを感じたに違いない。
幸い藤井選手に怪我はなかったが、マシンの状態はレース復帰することはできずにリタイヤとなった。
クラッシュする時にはスピードはやや弱まっていたように見えたのだが、フロントマスク全体やアンダーカウルを失ったフロントノーズはダメージを受けている可能性もあり、サーキットでの応急手当ては不可能と判断。日曜日の第6戦もエントリーを取り消すことになってしまった。

「GT3に今週初めて乗ったばかりで、まだまだ理解していない部分もあったので、自分のペースでついていって、自分なりにレースを進めて行ければと思っていました。セーフティカーが解除されて再スタートになって、その周回で目の前でアクシデントが起きていて、かなり慌ててしまいました。経験不足なんでしょうね。もう少し落ちついて対処できれば……」と、普段は明るくエネルギッシュな藤井選手も、意気消沈。次へつながるコメントを引き出すための質問を投げかけることも難しい空気だった。
しかしレースはゼロリスクではない。そのリスクが表面化させないように対処しながらチャレンジするのがモータースポーツだ。
最後に、新田守男選手に締めくくってもらうことにしよう。
「残念なことに、今回のレースウィークは、良くないことがたくさん起きてしまいました。富士に続いての2大会目ということで、野上選手と藤井選手には、さらにいろいろな経験を積んでもらってスキルアップしてもらいたいと考えていたんですが、思い通りにはならなかった。今週経験したことは、ドライバーにとっても、チームにとっても、いい経験として、今後に活かしてもらいたいです」
GTワールドチャレンジASIAは、第4大会が7月22日(土)〜23日(日)にモビリティリゾートもてぎで開催されるが、K-tunes Racingは不参加。日本開催の最終戦となる第5大会は8月19日(土)〜20日(日)、ホームコースである岡山国際サーキットで開催される。

リザルトFANTEC GT WORLD CHALLENGE ASIA 2023 Race5 GT3

7月15日(土) 鈴鹿サーキット 天候/曇り 路面/ドライ

Pos. Car No. CLASS Team / Car / Drivers Time / Gap Laps Best Lap
1 911 Pro-Am AAS Motorsport by Absolute Racing
ポルシェ911GT3R(992)
Vutthikorn INTHRAPHUVASAK/klaus BACHLER
1:21'06.116 26 2'03.741
2 500 Pro-Am チーム5ZIGEN
Nissan GT-R NISMO GT3
HIROBON/川端伸太朗
6.715 26 2'03.021
3 18 Pro-Am ポルシェセンター岡崎
ポルシェ911GT3R(992)
永井宏明/上村優太
8.094 26 2'03.726
4 11 Pro-Am Audi Sport Asia Team Absolute
Audi R8 LMS GT3 EVO II
Andrew HARYANTO/James Kuai YU
14.795 26 2'03.951
5 2 Pro-Am Climax Racing
メルセデスAMG GT3EVO
Bihuang ZHOU/Dennis LIND
17.579 26 2'04.044
DNF 96 Pro-Am K-tunes Racing
レクサスRC F GT3
藤井大温/新田守男
18Laps 5 2'22.264

FANTEC GT WORLD CHALLENGE ASIA 2023 Race6 GT3

7月16日(日) 鈴鹿サーキット 天候/晴れ 路面/ドライ

Pos. Car No. CLASS Team / Car / Drivers Time / Gap Laps Best Lap
1 37 Pro-Am Craft-Bamboo Racing
メルセデスAMG GT3EVO
AnthonyXu LIU/Daniel JUNCADELLA
1:00'18.949 27 2'03.229
2 88 Pro-Am Triple Eight JMR
メルセデスAMG GT3EVO
H.H.Prince Abu Bakar IBRAHIM/Luca STOLZ
9.279 27 2'03.543
3 4 Pro-Am R&B Racing
ポルシェ911GT3R(992)
Wei LU/Patrick PILET
29.471 27 2'03.738
4 2 Pro-Am Climax Racing
メルセデスAMG GT3EVO
Bihuang ZHOU/Dennis LIND
31.452 27 2'04.389
5 87 Silver R&B Racing
ポルシェ911GT3R(992)
Bo YUAN/Leo YE
34.991 27 2'04.882
6 47 Pro-Am D'station Racing
Aston Martin Vantage AMR GT3
星野敏/藤井誠暢
45.509 27 2'04.822

※K-tunes Racing 96号車は出走せず。

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