K-TUNES RACING

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GT WORLD CHALLENGE ASIA 2023 GT3 Report
2023.6.17-18 富士スピードウェイ
アジア各地から36台もの大量エントリー
刺激的すぎるレース展開となった初戦

GTワールドチャレンジASIAの初戦、K-tunes Racingが新たなチャレンジとして選んだステージに足を踏み入れる第一歩が、6月17日(土)〜18日(日)富士スピードウェイで開催された。

世界各地で開催されているGTワールドチャレンジは、GT3やGT4といった市販レーシングマシンで戦う60分のセミ耐久レース。アマチュアドライバーの参加をターゲットとしていて、プロドライバーとの組み合わせによってクラス分けされる、というのも面白いルールだ。そもそも性能差を抑制されているGT3、GT4というマシンに、独自のBoP(性能調整)を加え、エキサイティングなレースが展開され、人気を博している。
岡山トヨペットという新車ディーラーを母体としているだけに、K-tunes Racingにとっては絶好のステージ。LEXUS RC F GT3とGR Supra GT4の2台で参加することになったのは、ごく自然な流れだろう。
GT3に参戦するドライバーは、K-tunes Racingのチームオーナーである末長一範選手と、SUPER GTでも96号車を走らせている新田守男選手。ちなみにSUPER GTのマシンは他のレースへの参戦がNGとなっているため、GTワールドチャレンジで走るのは別の個体だ。
末長選手は岡山チャレンジカップでのN1-86でレースデビューすると、インタープロトシリーズへとステップアップ。そのマシンはあらゆるドライバーアシストのないリアルレーシングマシン。軽量でハンドリング性能は高いものの、ウイングが装備されないためダウンフォースが少なく、とくにブレーキングがシビアな特性になっている。それがドライビングスキルの向上に役立つのは間違いなく、ABSもトラクションコントロールも装備されているRC Fでも活かされるはずだ。

以前末長選手に聞いてみたことがある。RC F GT3を自分で走らせてみないのか?? その答えは「いやいや、ボクなんかが走らせてもねぇ」という謙遜したものだったが、しかし走らせてみたくないハズはない。インタープロトでドライビングテクニックを磨いた成果も実感しているに違いない。
今回初めてレースでRC F GT3に乗ることになる。その練習走行を終えて、マシンの印象を聞いてみた。「いやぁ、GT3楽しいね。パワーもあるし、安定感もある。まだちょっと慣れていないので攻めるようなところまでは行かないけど、楽しいですよ」と興奮気味だった。ついに自分でRC F GT3を走らせた喜びなのだろう。
続いてGTワールドチャレンジASIAについて、レース前に印象を語ってもらった。「こんなに台数が集まるとは、思わなかった。練習走行だけど、いろいろなマシンが走っていて、得意な部分や苦手な部分がそれぞれあって、面白いですね。一緒に走っていると、その違いが判って、面白い」ということだった。インタープロトは完全なワンメイクであり、N1-86も基本はワンメイクなのでマシンの特性は大きく変わるはずもない。これまで経験してきたレースとは違うマシンの特性の差、熱気が伝わってきたようだ。
走らせるRC F GT3はSUPER GTを退役した個体で、気になるのはそのコンディションだ。それをチェックするのに、世界中を探したとしても新田選手ほどの適役は居ない。「マシンのコンディションは悪くないと思います。タイヤが違うので(ピレリのワンメイクに指定されている)タイムは出ないけど、パワーも動きも悪くはないです」
原状のセットアップはどうなのだろうか?? 「初参戦ということで、ピレリタイヤのことも全然判っていないし、セットアップも十分とはいえない状況なんですけど、とくにセクター3で改善したいところがなかなか上手くいかなくて、思ったようなタイムは出せませんでした。フィーリングは悪くないので、そのあたりに対応できれば速さも出てくると思うんですけどね」

公式予選は、ドライバーそれぞれが別枠で走り、Aドライバーの予選で土曜日のレース1のグリッド、Bドライバーの予選で日曜日のレース2のグリッドが決まる。
まずは末長選手が予選アタックに向かう。インタープロトで走り慣れたコースではあるが、肝心のマシンへの習熟が不十分だった。1分44秒台から始まり、やがて43秒台へ。しかし36台が走るGT3の予選ではスペースを確保することが難しく、予選後半は伸び悩んでしまった。結果として1分43秒352で、32番手タイムとなった。
この予選は不本意だったようで、「木曜日が雨で全然走れなかったので、いろいろと不足しているかな、と思います。ただ42秒台には入れると思っていたんですが、コース上が混雑していたこともあって、最後はタイムを伸ばすことができなくて、ちょっと残念ですね」と末長選手はコメントしてくれた。ただ、言葉で残念とは言うものの、初めてのGT3 予選を戦った満足感は表情で明らかだった。
続く新田選手の予選は1分40秒271で、25番手タイムをマーク。ちなみに5月のSUPER GT第2戦での新田選手の予選タイムは1分35秒601だったので、およそ5秒ほどのタイムダウンということになる。これがほぼタイヤの性能差という計算だ。

土曜日の決勝レース1はAドライバーである末長選手がスタートを担当。エントリー台数が多く、ローリングスタートとはいえ、スタート直後は混乱することが予想された。実際に1コーナーでクラッシュが発生、セーフティカーとなる。
再スタートとなったのは5周目。2度目のスタートもクリアした末長選手は車群の中、27位でレースを戦っていく。混雑していることもあり、ペースを上げることができない苦しい展開。密集しているとオーバーテイクが難しく、前へ出ることもできない。
13周目に新田選手へとドライバー交代し、コース復帰。やはり現役SUPER GTドライバーの力を発揮し、オーバーテイクを繰り返してポジションを上げていく。しかしピットレーンで速度超過のペナルティを受け、ドライブスルーが課された。ピットレーンの速度リミッターが正常に作動しなかったのが原因だった。最終的に25位でチェッカーを受けることになった。
末長選手は「前も後ろも塞がれた状態で、4〜5台のグループの中で走っていたんですけど、こんなに接近した状況でのレースは初めて。それはそれで楽しかったんです。これがワールドチャレンジというレースなのかな、と思いました。日本のレースとは違った雰囲気と展開なので、めちゃくちゃ良い経験になりました。今まではインタープロトで本当にジェントルマンなレースをしてきましたけど、レースに対する考え方が少し変わるかな、と思いました」と大きなインスピレーションを受けたようだった。

日曜日の決勝レース2は、過激なレースとなった。それはGTワールドチャレンジASIAの公式サイトが「かつてないほどのクレージーなレースとなった」と表明しているほど。トップ争いしているマシンのクラッシュが2回、セーフティカーが3回という荒れた展開になった。
ヨーロッパのツーリングカーレースでは接触にあまり抵抗はないようで、ギリギリを超えたバトルが展開されることが多い。マシンが高性能になるほど速度が上がり、リスクやダメージが大きくなるので、当然GT3マシンでは大きなクラッシュへとつながりやすい。今回のレースではロングストレートが特徴的な富士スピードウェイということもあり、また海外のドライバーにとっては未知のコースでもあり、オーバーテイクのチャンスが多いと思われていた可能性がある。
スタートドライバーは新田選手、25番手から上位を狙う。「レースペースは悪くないから、しっかりとレースができればもっと上に行けると思う」という新田選手の想定は裏切られることになる。スタート直後、スロットルが戻らなくなるトラブルが発生。やむなくピットインして原因を探る。
エンジンか?? 電気系か?? まずは原因を見つけ出さなければならないが、それは時間がかかる。修正してコースに送り出したが、ロスタイムは約10分、5周遅れとなっていた。
その直後の8周目、2台のマシンがクラッシュしてストップしてしまったため、2度目のセーフティカーとなった。解除されたのは13周目、その時点でドライバー交代が可能なタイミングとなっていたが、ギリギリまで新田選手で引っ張り、17周目に末長選手へと交代した。

その直後18周目、ストレート上でタイヤバーストしたマシンが激しくクラッシュ。3度目のセーフティカーとなった。パーツがストレート上に散乱していたため、セーフティカーはピットレーンに回避するルートを選択したが、後続のマシンがストレートをそのまま進んでしまったため、多くのマシンにペナルティが与えられることになった。96号車もその中の1台となってしまった。
23周目に解除となり、レースは27周で終了。順位は21位だった。
レーシングスピードで5周しかしていない新田選手は「スタートしてすぐにスロットルが戻らないトラブルが出てしまって、こういう混雑した状況だと他のマシンに迷惑をかけてしまう危険性もあるので、ピットに戻って対応してもらいました。レース自体はかなり荒れた展開になってしまっていて、まともに周回できる状況にもならなかったんですが、末長選手にしっかりと走ってもらう時間があったのが収穫ですね」とレースをしっかりと戦えなかったことを残念がっていた。
レース最後の4周だけが全開だった末長選手は「今日は初歩的なミスがあって、ああいう形で長い時間ピット作業することになってしまって、とても残念でした。昨日と比べると100Rがスピードが乗るんですよ。路面のコンディションが良くなったんでしょう。それに対してセクター3がなかなか難しくて、上手くいきませんでした。次戦は鈴鹿で、RC Fの得意とするコースなので、良さを発揮させる走りをしたいですね。ただ今日のような荒れた展開ではなく、まずはしっかりとレースがしたいです」とやはり消化不良のレースに不満があったようだ。

リザルトFANTEC GT WORLD CHALLENGE ASIA 2023 Race3 GT3

6月17日(土) 富士スピードウェイ  天候/晴れ 路面/ドライ

Pos. Car No. CLASS Team / Car / Drivers Time / Gap Laps Best Lap
1 9 Pro-Am ビンゴ・レーシング
コルベットC7 GT3-R
武井真司/飯田章
1:01'00.987 33 1'40.306
2 911 Pro-Am AAS Motorsport by Absolute Racing
ポルシェ911GT3R(992)
Vutthikorn INTHRAPHUVASAK/Alessio PICARIELLO
2.516 33 1'39.996
3 4 Pro-Am R&B Racing
ポルシェ911GT3R(992)
Wei LU/Dennis OLSEN
3.591 33 1'39.976
4 2 Pro-Am Climax Racing
メルセデスAMG GT3EVO
Bihuang ZHOU/Dennis LIND
4.945 33 1'40.093
5 37 Pro-Am Craft-Bamboo Racing
メルセデスAMG GT3EVO
Anthony LIU/Daniel JUNCADELLA
6.764 33 1'40.189
25 96 Pro-Am K-tunes Racing
レクサスRC F GT3
末長一範/新田守男
1Lap 32 1'41.063

FANTEC GT WORLD CHALLENGE ASIA 2023 Race4 GT3

6月18日(日) 富士スピードウェイ  天候/曇り 路面/ドライ

Pos. Car No. CLASS Team / Car / Drivers Time / Gap Laps Best Lap
1 88 Pro-Am Triple Eight JMR
メルセデスAMG GT3EVO
H.H.Prince Abu Bakar IBRAHIM/Luca STOLZ
1:00'26.350 27 1'40.232
2 8 Pro-Am EBM
ポルシェ911GT3R(992)
Setiawan SANTOSO/Reid HARKER
10.556 27 1'41.156
3 4 Pro-Am R&B Racing
ポルシェ911GT3R(992)
Wei LU/Dennis OLSEN
13.741 27 1'39.726
4 87 Silver R&B Racing
ポルシェ911GT3R(992)
Leo YE/Bo YUAN
14.294 27 1'41.083
5 5 Pro-Am PLUS with BMW Team Studie
BMW M4 GT3
山口智英/荒 聖治
17.172 27 1'40.172
31 96 Pro-Am K-tunes Racing
レクサスRC F GT3
末長一範/新田守男
5Lap 22 1'42.003

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