K-TUNES RACING

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2022.9.17-18 スポーツランドSUGOまさかのサクセスウエイト不足判定で
最後尾スタートから9位入賞を果たす

K-tunes RacingがSUPER GTに参戦を始めたのは2018年。通算38戦目となる今大会で、チームはかつてない、痛恨のミスを犯してしまった。

公式予選を前にした午前中の公式練習から、K-tunes Racingの96号車はいい走りを見せていた。公式練習でのタイムはあまり重要ではないのだが、それでもベストラップは全体の2番手。進化を続けるダンロップタイヤは、耐久性の面でもレベルアップを果たしているが、今回のレースに向けたスペックの選定も上手くいったようだった。
つまり予選で好位置を獲得し、決勝レースでも上位グループの中で戦えそうなストーリーが、おぼろげながら見えていたように思えた。
そして公式予選、予選Q1を担当した新田守男選手はA組4番手でQ2進出を決めた。マシンのセットアップも良好で、予選Q2に向けた変更はナシ。タイヤの空気圧だけを修正して、高木真一選手がマシンに乗り込み、コースイン。
最初のアタックで1分17秒3をマーク、その時点でのトップタイムとなった。Q1で17秒台に入ったのは1台だけだったが、96号車を含めて数台が18秒台前半を記録しており、Q2でのタイムアップを考えると逆転されるのが順当かと思われた。残り時間は3分。
次々とタイムアタックに入っていくライバルたち。しかし高木真一選手のタイムを超えるマシンは、なかなか現れない。そして、ついにタイムアップ。2番手タイムの61号車BRZの山内英輝選手に対して0秒315という大きな差をつけて、見事ポールポジションを獲得した。高木真一選手にとってはSUPER GT通算14回目、K-tunes Racingにとっては2020年第6戦鈴鹿で阪口晴南選手が獲得して以来、通算3回目のポールポジション。
しかし、それは日が傾く頃には一転、予選タイム抹消という処分を受けることになった。レギュレーション違反の内容はサクセスウエイトが不足していたこと。公式予選終了後の再車検によって指摘されたのだった。

サクセスウエイトは開幕戦以降に獲得したドライバーポイントの3倍の重量(kg)の搭載が課せられている。96号車の場合は38kgで、それは前戦鈴鹿から同じ。ただしサクセスウエイトに関しては慎重を期すために毎戦取り外され、チェックするのが一般的だという。K-tunes Racingの場合、複数の金属プレートをボルトで一体化した形式を採用しており、今回は何らかのミスにより重量が不足してしまっていたのだ。
通算38戦目、K-tunes Racingでこのようなミスは、かつて経験がなかった。レギュレーションの解釈といった性質でもなく、単純なミスによるものだ。予選タイムが抹消されたことによって、最後尾スタートとなる。マシンもタイヤもコンディションは良く、レースペースもトップクラスの速さを持つ。果たしてどこまで追いあげることができるのか?? 決勝レースでの96号車のオーバーテイクショーを思い描くのが、ダメージから抜け出す唯一の方法だった。
K-tunes Racingは決勝レースを、最後尾のグリッドからスタートするのではなく、ピットからのスタートを選択することにした。そのメリットは、最初にニュータイヤに交換することによって、ラップタイムが有利になるだけでなく、ドライバー交代のタイミングに自由度が高まるので、レース戦略面で優位になる。SUPER GTでは予選で使用したタイヤでスタートするので、磨耗状況などによってはタイムの落ち込みが大きく、また耐久性という面でも早めのタイミングでピット作業することになってしまう。
もちろん、通常のスタートよりも出遅れることは間違いないのだが、コースインしてしまえばほぼ単独走行となり、追い上げていくことが可能になる。

天気予報は、日曜日の午後に雨、というものだった。これは台風の影響によるもので、実際の台風の位置ははるか南、九州でしかなかったが、その影響によって宮城県は不安定な天候となっていた。
スタートに向けてライバルのマシンたちがグリッドに並ぶころ、見計らったかのようにミストのような細かな雨がわずかに降っていた。このまま天気予報の通り、1mm程度の弱い雨が降るのか?? それとも台風の影響で曇りのまま?? あるいは強い雨か??
ピットガレージの前で待機していた96号車には、新田守男選手が乗り込み、フォーメイションラップに続いてスタートが切られるのを待っていた。タイヤは指定通りに予選Q2で使用したソフトを装着、スタートと同時にミディアムの新品へと交換する。
スタートが切られ、予定通りタイヤ交換を済ませ、新田守男選手がピットロードを出るくらいのタイミングで、GT300クラスのマシンがクラッシュ、コースサイドにマシンが止まってしまったため、セーフティカーとなった。これでピットスタートしたロスタイムが帳消しになり、ニュータイヤでスタートできたメリットだけが残ることになった。
3周目に再スタート、新田守男選手はわずかな距離で最下位27位から24位へとポジションを上げ、さらにトップとの差は15秒という位置から再スタートした。5周目には19位に上がり、トップグループと同じ1分20秒台のハイペースで周回を重ねていく。

しかし12周目に入った頃から小雨がパラつき始め、14周目にはコースが完全なウエットとなる雨へと発展。このタイミングで素早く反応してレインタイヤへと交換したチームもあった。結果からいえば、この時にレインタイヤへと交換した2号車GR86が優勝を飾っている。
だが不安定な空模様だけに、すぐに雨が上がり路面が乾く可能性もある。しかもこの序盤のタイミングではドライバー交代には早すぎる。1人のドライバーは3分の2以上の周回をするのはレギュレーションで禁止されており、つまり新田守男選手は3分の1以上走る必要がある。
K-tunes Racingはそのままスリックタイヤでコースに留まり、新田守男選手が3分の1を走りきったところでドライバー交代するというプランを採用した。ピットスタートが上手く決まったこともあり、大きなリスクを冒さずに、失敗しにくい戦略を選んだのだ。

タイヤ交換のためにピットへと入るマシンが多くなり、96号車はタイミングモニター上で7位にまでポジションを上げていた。ただし雨は強く、スリックタイヤでの走行は厳しい状況だった。ただし後方に居るレインタイヤへと交換したマシンが、ハイペースで追い上げてきている。そして25周目、高木真一選手へのドライバー交代、燃料補給、そしてレインタイヤへの交換が行われた。このまま最後まで走り切ればピット作業する必要がなく、早めにレインタイヤへ交換したチームに対してピット1回分優位になる。必要なことは、雨が降り続くことだった。
19位でコースへと戻った高木真一選手は、ペースが速いこともあり、30周目には14位へ。この頃、再び雨は強さを増していた。35周目には12位、40周目に11位と、オーバーテイクの難しいSUGOにも関わらず、着実にポジションを上げていくのだが、雨はほとんど上がってしまっていた。
まだレースは半分を過ぎたあたり、周回数は40周近く残っている。この天候ではレインタイヤが耐えきれるとは思えないが、スリックタイヤに交換して再び雨が降り出したら最悪の結果となる。K-tunes Racingは早めのタイミング、46周目にスリックタイヤへと交換した。そしてほとんど全てのマシンがタイヤ交換を済ませた50周目、10位へとポジションを戻していた。
55周目に上位のマシンがコースアウトしたことで9位へと上がると、前を走る61号車BRZを追いかける。しかし、その差を詰めることはできず、高木真一選手は9位でチェッカーフラッグを受けた。

公式予選でのトップタイムから一転、予選タイム抹消となった。
天国から地獄。それだけに決勝レースでは全てのオペレーションにミスなく、何かひとつでも成果が求めれられていた。確かに9位という結果は、決勝レースを通じて発揮した速いペースから考えると、十分なものではなく、悔しさが残る。
ただ次へつながるという面で今回の9位は、悔しさを忘れなければ、大きな意味を持つに違いない。

コメント

  • 影山正彦チーム監督
    影山正彦 チーム監督

    「最後尾からのスタートでしたが、2人のドライバーのガンバリ、チームメカニックが大きなミスなくピット作業してくれたことで、9位という結果を出すことができました。昨日の公式予選で大きなミスをしてしまっただけに、入賞できたことは大きな価値があると思います。あのようなミスが起きないように気を引き締めて、残り2戦をいいレースをしていきたいですね。」

  • 新田守男選手
    新田守男 選手

    「ボクたちの選択としてはピットスタートは正解だったと思います。レースペースも良かったですし、雨が降り始めてもスリックのままである程度走れたので、ポジションを上げることができましたし、何とか引っ張って高木選手へ交代することができました。結果として2ストップにはなりましたけど、難しいコンディションの変化の中で、いい形でレースができたと思います。」

  • 高木真一選手
    高木真一 選手

    「新田選手と交代して、レインタイヤで走り出したんですが、このマシンで雨を走るのは初めてだったんですが、路面状況としては完全なウエットになっていたので、攻めて走ることができました。タイヤをセーブしながら走っていたんですが雨の状況が変化して、スリックに戻ってしまいましたが、完全なドライのレースよりも、良い結果になったんじゃないかと思います。」

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