K-TUNES RACING

2021.01.30 富士スピードウェイ2戦連続のクラス2位を獲得
次なる進化へ照準は定まる

インタープロトシリーズの最終戦が、1月30日(土)に静岡県・富士スピードウェイで開催された。新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、年間スケジュールが大幅に変更されたとはいえ、1年でもっとも寒いとされるこの時期にレースを行うのは異例だ。

気温がかなり低くなることを考慮し、タイヤはコンパウンドが柔らかいソフトが供給された。この変更はマシンのセッティングはもとより、ドライビングにも影響を及ぼすことになる。それゆえ前日に行われたフリー走行では、マシンセッティングに苦慮するチームもあったが、K-tunes Racingにとってこの変更はさまざまな部分でいい方向に左右したようだ。
ジェントルマンクラスの予選は、気温が上がりきらない早朝から行われた。ソフトタイヤといえどもグリップが得られる温度に達するまでに時間を要するだけに、末長一範選手も予選序盤は慎重に周回を重ねつつ20分間の計測をこなしていく。4周目に1分49秒150をマークし、その後も47秒309、47秒189と着実にタイムを縮め、アタック9周目には46秒711というベストタイムを叩き出す。予選後、末長選手が「クルマはとても運転がしやすくて、とくにセクター3のようなコーナーが続くところでは、グリップ力があってクルマの向きが変わりやすい」と振り返っていたことからも、マシンに対して好感触を得ながら、いいリズムで走れていたことが伺えた。結果としてジェントルマンクラスの2番手、総合5番手の位置から決勝レースに挑むことになった。

最終戦も1day開催のため、決勝レースはプロと同じ2連戦の形で行われる。まず6周の第1レースが行われ、5分のインターバルのあと8周の第2レースを戦う。予選のときよりは気温が上がったとはいえ、序盤から攻めていけるような状況ではない。タイヤ、ブレーキが冷えている状況でマシンをコントロールし、落ち着いたレース運びをすることがカギとなる。
1周目のコカ・コーラコーナーで#44山口選手の攻めを凌ぎきれず、#37大蔵選手がスピンして順位を落とす。そのアクシデントをうまくすり抜けた末長選手はポジションを4番手に上げた。
末長選手の前には、エキスパートクラスの2台に続き、同じジェントルマンクラスの#55寺川選手が3番手を走っている。いずれも予選で45秒台を記録した猛者で、末長選手にとっては挑戦し甲斐のあるドライバーたちである。

末長選手は冷静なレース運びで、いずれのセクターにおいても安定したペースを維持しながら周回を重ねていく。3周終了時点で5位の#3フライングラット選手との差は1秒693まで開くが、前を行く寺川選手との差がなかなか縮まらない。しかし、その姿が見えている状況でレースができていることは、マシンはもとより、末長選手自身のコンディションが悪くないことを物語っていた。第2レースを有利に展開するという意味でもこのポジションはキープしておきたいところ。後半に向けてフライングラット選手がペースを上げてくるが、接近戦には持ち込ませず、約1秒差をキープしたまま第1レースはジェントルマンクラス2位、総合4位でチェッカーを受けた。
5分のインターバルを挟んで行われた第2レースは、今シーズンの掉尾を飾る戦いとなる。シリーズチャンピオンの獲得は叶わないものの、ポイントをしっかりと獲得して順位を上げるためにも上位進出を狙いたいところだ。

第2レースもクリーンなスタートから、末長選手は1コーナーへ積極的に飛び込み寺川選手のテールに食らいつく。後方からはフライングラット選手、それをパスした大蔵選手が迫ってくる。3周目のコカ・コーラーコーナーで大蔵選手に先行を許して順位をひとつ落とすが、バトルの中でも自身のペースに乱れはなく、末長選手本来の速さも際立っていた。今シーズンは出走回数が少なかったこともあり、レース終盤にスタミナが切れることもしばしばあったが、「今回は疲労でペースダウンしたり、大きなミスをすることがなく、クルマのコンディションも維持できました」と語り、戦いのなかで自分の走りを実践できていたことを証明してみせた。結果として末長選手は第2レースをジェントルマンクラス2位、総合5位でフィニッシュし、2020年のシーズンを締めくくった。

今シーズンは、出走回数も含めて万全だったとは言い難い。しかし、参戦できない状況が続いていても、しっかりとトレーニングを重ねてきたことが実を結んでいることは、最終戦の走りからも見て取れた。あとは、いかにして上位に君臨するエキスパートクラスのドライバーとの差を縮め、彼らと戦える領域にどれだけ踏み込んでいけるかが課題となる。2021年シーズンも末長選手のチャレンジからは目が離せない。

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2021.01.30 富士スピードウェイシーズンの締めくくりに相応しい快走を見せたものの3位に留まる

2020年のインタープロトシリーズでは厳しい戦いを強いられてきた中山雄一選手だが、最終戦では以前の速さを取り戻し、予選から決勝レースまで2020年シーズンを締めくくるベストな走りを見せてくれた。

使用タイヤがミディアムからソフトへと変更されたこともあり、予選は序盤こそ慎重を期していたが、上位陣が好タイムを記録してくなか、中山選手も尻上がりにタイムを上げていく。4周目には1分48秒300、5周目に45秒台を記録し、7周目には43秒854を叩き出す。タイヤの変更によって危惧されるマシンのコンディションの変化についても、「タイヤがソフトになったことで、クルマの素性的にダメだった部分がグリップのよさに隠れて問題として出ていない。タイヤの限界もうまく引き出せた」と予選後に語っていた。

予選は4番手。中山選手を含め、上位陣は43秒台という「夢のようなタイム」(中山選手)で、0.2秒のなかに7台がひしめく、相当に接近したシビアな結果となった。決勝は気温が上がり切らないなかで、難しいレースになるだろうが、自身のモチベーションやマシンのコンディションも上向きであることは間違いない。予選の結果を踏まえ中山選手は、「バランスが崩れないように、しっかり調整して決勝に望みたい」と、意気込みを語ってくれた。残念ながら王座争いには無関係だが、それゆえに終始積極的に攻めていける。久しぶりに戦える感触を得て挑む最終戦は、今シーズンの鬱憤を晴らす絶好の舞台とも言っていい。
2周のフォーメーションラップを経て、ローリングスタートから8周で行われる第1レースの火蓋が切られた。序盤からポールシッターの#88佐々木大樹選手に#16ロニー・クインタレッリ選手が仕掛け、そこに#37福住仁嶺選手も加わって激しい戦いが繰り広げられる。中山選手は2周目の1コーナーで#32坪井 翔選手に先行を許すが、すぐさまアドバンコーナーで抜き返し4番手の位置をキープして周回を重ねていく。前を行く佐々木選手を追うが、「クルマは今シーズンもっともバランスがよくて、コーナーは一番速かったと思います。でも、やっぱり直線が遅いというのは変わらずで、それが影響して、最後のところで攻めきれない、攻めるところまで直線で持ち込めないという状況でした」(中山選手)。

4番手のまま周回を続け、4周目には1分45秒039のタイムを記録し、調子のよさをアピール。5周目には、ダンロップコーナーでミスをした佐々木選手を尻目に順位を3番手に上げ、ロニー選手を追う展開となる。タイムも1分44秒980を記録し、5周終了時点で前を行くロニー選手との差は0.481秒。後方から迫ってくる坪井選手への対応にもソツがない。前回までなら凌ぐのも難しかった局面だが、「マシンの状態がよかったので落ち着いて対処できた。直線ではツメられてしまうが、ブレーキングがいいので、攻められてもしっかり防御できた」と、マシンのコンディションのよさに加え、自身の積極性が功を奏し、坪井選手からのプッシュにも焦りの色は皆無だ。
そして8周目、前を行くロニー選手に対して、1コーナー、アドバンコーナーで牽制し、ダンロップコーナーで見事にパスしてみせる。「2021年のテーマが“攻め”なので、守るか攻めるか、どうするかという場面では、迷わず攻めの姿勢を出していきたい」という中山選手の気迫が全面に出たシーンと言える。しかしその刹那、後方から2台の争いを冷静に観察していた坪井選手に先行を許してしまい順位は3番手となり、第1レースはこのままフィニッシュとなった。

続いて行われた第2レース、後続をうまく抑えながら前を行く坪井選手を追いたいところだったが、1コーナーのアウトからロニー選手に先行を許してしまう。しかし、中山選手に焦りはない。ペースが上がらないロニー選手のテールに食らいつき、2周目のダンロップコーナーで見事にパスして順位は3番手に浮上する。その後、前を行く坪井選手よりも速いタイムで追い上げるが、1コーナーの進入で後方から迫ってきたロニー選手が中山選手に接触し、マシンはリヤセクションにダメージを負ってしまう。しかも、1コーナーでロニー選手がコース上にSTOPし、セーフティカーが導入されることとなった。
セーフティカーの先導は6周目まで続いた。解除された時点でレースの規定時間は残り1分を切り、ラスト1周のスプリントバトルとなった。坪井選手を攻略するべく攻めに出るが、「右リヤに接触による影響が出て、左コーナーでリヤのグリップが得られなかった」と攻めきれず、レースは終了。今シーズン最高のコンディションで挑めた最終戦は、さらに上位を狙える可能性があっただけに、3位表彰台を獲得しても「いまいち噛み合わなかった」と、悔しさをにじませた。

しかし、戦う準備がしっかりできて攻めの姿勢を貫けたことは、来シーズンに光明を見いだせたことは間違いない。2020年シーズンはランキング5位で終えたが、2021年は「攻め」をテーマに掲げ、さらなる高みを目指す中山選手の活躍に期待したい。

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コメント

  • 末長一範
    Gentleman Driver末長一範

    「2020年は出走回数が少なかったけど、レース以外のところで練習ができていたし、それが結果的にタイムアップに繋がったりして、成長を実感できたシーズンでした。エキスパートクラスのドライバーを含めた上位陣に対して差があるのは理解しているので、それをいかに詰めていくかが、次のシーズンに向けた課題です。あの集団に入って戦えるようになれば、これまでとは違う世界が見えるだろうし、レースがもっと面白くなると思うので、それを目標にしたいですね」

  • 中山雄一
    Professional Driver中山雄一

    「トータル16周のレースと考えて、プランを練っていたのですが、うまく噛み合わなかったのが残念でした。今シーズンは難しいレースが多かったのですが、最終戦はマシンにトラブルもなく、クルマのセットがバッチリきまっていいレースができました。他のドライバーと同じセッションがこなせるようになったのも大きいですね。毎回こういうレースができるよう準備をして、結果を残せるように努力をして、2021年シーズンはチャンピオンを獲りたいです」

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