K-TUNES RACING

2019.6.29-30 チャン・インターナショナル・サーキットタイミング最悪のセーフティカーによって
戦略的に実現しかけた上位入賞が霧散

14,14,1,10,10,14,1,10。この数字の列は、昨年のK-tunes Racingのリザルトである。2勝は称賛されるべき成績ではあるが、それ以外の6戦は10位3回、14位3回という極端な結果であり、それがチャンピオン争いを厳しいものにした。ちなみにチャンピオンを獲得した#65黒澤治樹/蒲生尚弥組は1勝だった。

影山正彦チーム監督は「シーズンを通じてコンスタントに上位入賞すること」を2019年の目標だとコメントしていた。そして迎えた2019年、1,16,1というのが第3戦までの成績。「優勝か?ポイント圏外か?」という昨年からの流れを切り換えることはできていない。
だからこそ、第3戦鈴鹿での優勝を果たした直後、今回の第4戦タイでこそ、そのトリッキーなリザルトというジンクスを返上する大きなチャンスでもあった。

しかし2勝目を挙げたことで、第4戦からは96号車には60kg相当のウエイトハンデが与えられることになった。5kgでも影響は少なくない。「優秀なチームだから60kgのハンデで戦いなさい」というのが、SUPER GTのレギュレーションなのだ。そのウエイトハンデは、今後ポイントを獲得すると増えていき、第7戦で半分に、最終戦ではゼロになる。つまり、シリーズチャンピオンを狙うには、その重いウエイトハンデで戦い、結果を積み重ねていかなければならない。

タイにとって、6月は暑い4月を乗り超えた雨期。いつ雨が降り出してもおかしくない雰囲気は日本の梅雨と同じだが、しかしタイは熱帯気候なので短時間に強い雨が降り注ぐ、スコールになることが多い。当然レースは波瀾含みになることが予想できた。しかし結果的に、今回のレースでは雨の影響はなかった。

土曜日の午前中、プラクティスでしっかりとセッティングを煮詰め、午後の予選に向かった。しかし、影山正彦チーム監督は「Q1を突破できたら、快挙だよ」というほど、プラクティスでのタイムは24台中22位と低調だった。その予選Q1を担当したのは阪口晴南選手。タイムを少しずつ上げていき、最終的に16位、最下位ではあるものの、見事Q1を突破し予選Q2へと駒を進めることができた。
新田守男選手が担当した予選Q2では、ポジションをひとつ上げ、15位となった。

しかし予選下位であることは違いない。決勝レースで上位進出するためにチームが採った戦略は、阪口晴南選手でスタートし長く引っ張り、新田守男選手への交代時には給油量を少なく、しかもタイヤ無交換でロスタイムを少なくする、というもの。タイヤ無交換作戦は、軽量なJAF-GTマシンでは時々見られるが、重量のあるGT3マシンではタイヤの耐久性に不安が残る。ただしタイのサーキットの路面と、今回持ち込まれたブリヂストンタイヤの組み合わせであれば、「試す価値はあると、思っていました」と成澤エンジニアの頭の中では想定されていた。

Photo Gallery

2019.6.29-30 チャン・インターナショナル・サーキットタイミング最悪のセーフティカーによって
戦略的に実現しかけた上位入賞が霧散

決勝レース、阪口晴南選手は最初の2~3周はペースが苦しそうで、1周目、2周目とひとつずつポジションを下げ、17位へ。そこからはペースを取り戻し、前のマシンを追いかける形になったものの、オーバーテイクまでは届かない。

96号車のポジションが上がっていったのは、ライバルたちがドライバー交代のためにピットインに入り始めた24周目から。27周目には9位、32周目には6位へ。タイヤは苦しくないのか、33周目に阪口晴南選手は96号車のベストタイムを記録する。そしてついに35周目には3位にまでポジションを上げることに成功。
この状態でドライバー交代すれば、コースに戻るのは7~8位であることは予想できた。不安要素は、無交換となるタイヤの状況と、ピット作業を素早く完璧に終えることができるか?という2点だった。

しかしその周、GT500クラスで多重クラッシュが発生し、マシンの撤去作業のためにセーフティカーが入ってしまう。K-tunes Racingから見ると、ドライバー交代を済ませたマシンとの距離がゼロになってしまうという、最悪の事態となった。戦略はセーフティカーによって霧散してしまったのだ。

再スタートのタイミングで、新田守男選手へとドライバー交代。当初の予定通りタイヤ無交換とし、そのピットタイムは53秒。これはライバルたちより10秒近く速いタイムであり、セーフティカーがなければ上位進出のための大きな要因になったことだろう。

スタート順位と同じ15位でコースに入った新田守男選手は、前を走るマシンとの差を少しずつ詰めていったものの、届かない。結局上位のマシンがトラブルで脱落したことによって1つポジションを上げ、14位でフィニッシュした。

その結果、トップでタイに入ったシリーズポイントランキングは、ライバルである#55高木真一/福住仁嶺組が9位となったことで逆転され、2位となってしまった。ただし、その差はドライバーズランキングで0.5ポイントではある。 K-tunes Racingは14位という結果になり、「優勝か?、ポイント圏外か?」というチームのジンクスは打破できなかった。コンスタントに入賞するには何が必要なのか?その答えはまだ見つかっていない。

Photo Gallery