K-TUNES RACING

2020.11.28-29 富士スピードウェイ苦手意識の富士ながら予選4位を獲得
しかし決勝は2ストップで22位に終わる

2020 AUTOBACS SUPER GT シリーズの最終戦が、11月28日(土)~29日(日)に静岡県・富士スピードウェイで開催された。すでに初冬といった寒さでの開催であり、例年であればオフシーズンのファンイベントが開催されているタイミングでのレースは、いろいろと勝手が違っていた。とくに温度に対して敏感に反応するエンジンとタイヤは、その影響を強く受けていた。

すでに今シーズン4度目の開催となる富士スピードウェイは、K-tunes Racing 96号車にとって得意なコースではない。開幕戦は予選8位/決勝11位、第2戦は予選26位/決勝23位、そして第5戦は予選7位/決勝26位というのが、今シーズンの富士での戦績だ。GT300クラスのエントリーは最大30台であり、決勝レースでの結果がとても厳しいものであることが判る。
しかし富士での苦戦は今シーズンに始まったことではなく、2018年も、2019年も同じように苦手意識があった。LEXUS RC F GT3のマシン特性はコーナリングマシンであり、長いストレートで勝負できるターボエンジンを持っておらず、タイトなセクター3を機敏に駆け上がる軽量なボディでもなかったからだ。

最終戦は例年通り、ウエイトハンデがゼロとなり、全車が素の状態でレースを戦う。そのガチンコ勝負こそ、最終戦の見どころであり、チャンピオン決定となるステージ最大の演出でもある。チームはシーズンを通じて進化させてきたマシン、セッティング、戦略を駆使して臨むことになる。
しかしK-tunes Racingにとっては、低い気温が難問でもあった。3月に行われたシーズン開幕前の公式テストよりも寒く、ダンロップタイヤの特性について手さぐりの状態に戻ってしまうことを意味していたからだ。気温が低いということはソフトなコンパウンドが選択される方向になり、タイヤの空気圧も発熱しやすいように高めにセットされる。問題はそのバランスポイントであり、それを見極めるデータが欲しかったところだ。
土曜日午前中の公式練習、新田守男選手は1分35秒996をマーク。順位は4番手となった。今シーズンの富士での予選タイムは1分37秒台であり、1秒以上タイムアップしていた。その理由は低くなった気温でパワーアップしたこと、そしてソフトなタイヤが生み出す高いグリップ力といっていいだろう。
あくまで公式練習でしかないため、あまり順位は重要ではないのだが、富士での4番手という順位はチームに期待感が拡がるのに十分な成果だった。

午後の公式予選、Q1を担当した新田守男選手は3番手でQ2進出を果たす。そしてQ2では阪口晴南選手が1分35秒342というGT300クラスのコースレコードを記録し、見事に予選4位を獲得した。6位までがコースレコードを記録しているのだが、それは例年富士でのレースが5月と8月という比較的暑い時期であり、タイムが伸びていなかったというのが真相だ。

公式練習での成果はフロックではなかった。公式予選で4位という結果を残したことは、大きな成果といえるだろう。しかも今回は最終戦ということでウエイトハンデが全車ゼロという状況での、予選だったのである。少なくとも鈴鹿でのポールポジション獲得以降、一発の速さはモノにした感がある。
予選上位、つまり周囲に居るのはチャンピオン争いをしている上位ランカーたちで、K-tunes Racing 96号車は少々場違いに感じなくもない。それはチームの進化を物語っているようにも思えた。
1年を締めくくるに相応しい最終戦が展開される!K-tunes Racingファンならずとも、そうした期待が膨らんでいった。

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2020.11.28-29 富士スピードウェイ苦手意識の富士ながら予選4位を獲得
しかし決勝は2ストップで22位に終わる

いつものように決勝レースは新田守男選手がスタートドライバーを担当。気温が低いため、タイヤを発熱させるためにマシンを左右に振るウエービングが終わらず、フォーメイションラップが3周へと伸ばされ、スタートが切られた。

K-tunes Racing 96号車はセカンドロー4番グリッドから、そのままの順位をキープしてレースはスタートした。しかしペースは周りのマシンたちよりも0.5秒以上遅く、少しずつ3位から離れていく。
5周目には5位へポジションを落とすと、ペースはさらに悪化し周囲のマシンよりも2~3秒という大幅なペースダウンとなっていった。原因はタイヤのトラブルによるもので、「コースに留まるのが精一杯で、もう順位を気にしている場合じゃなかった」と新田守男選手はその時の状況を説明してくれた。このレースにシリーズチャンピオンを賭けて戦っているマシンもあり、彼らを無益なトラブルに巻き込みたくないという感情も、ベテランドライバーに芽生えていた。
しかしレギュレーション上では18周を過ぎるまでは、ピット作業を行うと不利になる。18周目まではドライバー交代ができず、つまりもう1回余計にピットに入らなければならなくなるからだ。ベテラン新田守男選手は、壊れたタイヤを騙し騙し走らせて、19周目にピットイン。ドライバー交代、燃料補給、そしてタイヤ交換を行った。

バトンを受け取った阪口晴南選手だったが、コースに復帰した時には24位にまで順位を落としていた。そして、やはりペースを上げることはできなかった。新田守男選手のパートから大きく変更されているわけではないので、当然だ。
31周目には18位にまでポジションを挽回したものの、やはり大幅にペースダウン。残りはまだ30周近くが予定されていて、かなり厳しい状況になってしまった。そして38周目、ついにK-tunes Racing 96号車はピットへ戻り、タイヤ交換だけを行って、再びコースへ。
当然ポジションは24位まで落とすことになった。しかしペースは相変わらずで、チェッカーを受けた時には22位という結果となった。ダンロップタイヤは使用した3セットともに、タイヤトラブルが発生し、大幅なタイムダウンが余儀なくされた。タイヤとのマッチングだけでなく、マシンのセットアップ、ドライビングなどの部分でも、ステップアップすべき要素は残されているのだろう。

最終的にK-tunes Racing 96号車は、最高位4位、ポールポジション1回、入賞2回、表彰台ゼロという結果となり、新田守男/阪口晴南選手は15ポイントを獲得しシリーズランキングは16位となった。
影山正彦チーム監督は、今シーズンを振り返り「過去2シーズンと比較して、苦しいシーズンでした。それはリザルトを見てもらえば判ると思いますが、とくにシーズン前半はダンロップタイヤに対するデータがなくて、何をすればいい結果に繋げることができるのか?見えない状況でしたね。今シーズンはチームとしても新しいメンバーが何人も入ってきて、チーム体制としても変化がありました。今シーズンの苦しみが来シーズンの成果に繋がるように、チームを立て直していきたいですね」とコメントしてくれた。

最終戦終了と同時に、2021シーズンはスタートを切っている。このオフシーズンにこそ、レベルアップすべき絶好のタイミングに違いない。

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