K-TUNES RACING

2020.10.24-25 鈴鹿サーキットPP獲得もタイヤトラブルで後退
しかし絶好のSCが入り5位入賞

K-tunes Racing にとって、鈴鹿サーキットは特別な存在だ。2018年シーズン、2019年シーズンと、2連覇を達成しており、とくに2018年はチーム初勝利というメモリアルな場所なのである。

そうした結果を支えているのは、LEXUS RC F GT3にとってアドバンテージを得やすいコースだからだ。GT300クラスにはさまざまなマシンが参戦しているが、エンジンパワーはより大きな排気量やターボを持つマシンが優位にあり、ハンドリングという面ではより軽量なJAF-GTが優位となる。LEXUS RC F GT3は、重量級のGT3マシンでありながら、ハンドリング志向というバランスに優れたマシン。それが鈴鹿のコースにはピタリとマッチしているわけだ。

しかしハンドリングコースであるということは、それだけタイヤのファクターが大きくなる。タイヤと路面のマッチングによってタイムは影響を受けやすく、またタイヤの負担が大きいので耐久性の面でも注意が必要になる。
また有力チームはすでに多くのポイントを獲得しており、そのポイント×3kgのウエイトハンデが与えられる。5台のマシンが100kgで、2台のマシンが90kg台という状況は、24kgのK-tunes Racing 96号車にとって絶好のチャンスでもある。

今回の予選は、Q1を新田守男選手、Q2を阪口晴南選手が担当することになった。いつもとは逆のフォーメーションだ。その理由は、阪口晴南選手が自らQ2アタックに立候補したためだ。もちろん若手ドライバーのワガママを通したわけではない。公式練習でもしっかり速さを確認できていたチームは、Q2進出は難しくないと判断。それならば鈴鹿を知り尽くした阪口晴南選手にQ2を任せることで、予選上位を狙うことにしたのだ。
その期待通り、新田守男選手は予選Q1で1分56秒459をマーク。ベテランドライバーの渾身のアタックは、見事に全体のトップタイムという結果を生んだ。そのタイムを確認した阪口晴南選手は一瞬「ヤバイ」と思ったそうだが、そのQ1で新田守男選手がチェックした修正点を盛り込み、チームはマシンを細かくアジャストすることができた。

その予選Q2、満を持して臨む阪口晴南選手をチームはやや遅らせてコースへと送り出した。慎重にタイヤを温めてからのタイムアタックは、すべてのセクターで全体ベストを示す赤い数字をタイミングモニターに並べ、1分55秒838を記録。見事、阪口晴南選手にとってSUPER GT初ポールポジションを奪取してみせた。K-tunes Racingにとっても2018年鈴鹿以来、2度目のポールポジションとなった。
ちなみにGT300クラスのコースレコードは、そのポールポジションを獲得した時に中山雄一選手が記録した1分55秒531で、それにはわずかに届かなかった。

Photo Gallery

2020.10.24-25 鈴鹿サーキットPP獲得もタイヤトラブルで後退
しかし絶好のSCが入り5位入賞

2年ぶりのポールポジションに歓喜するK-tunes Racing、といきたいところだが、実際のチームは冷静だった。なぜなら、今回の鈴鹿で使うダンロップタイヤについて、まだレース距離でのチェックが不十分で、正直なところ未知数だったのだ。

決勝レース、残念なことにその不安は的中してしまうことになる。
スタートドライバーを担当するのは新田守男選手。ポールポジションからレースをリードしていく。2位の#61BRZと2台だけが1分59秒台でペースが速く、3位以下のマシンを1周1秒前後も引き離していく。
2台のマッチレースかと思われた6周目、急に新田守男選手のペースが悪化。2分6秒台という大幅なペースダウンで、7周目には2台にオーバーテイクを許して3位、8周目にも2台に抜かれて5位、10周目に6位、そして14周目には9位にまで一気にポジションを落としてしまった。
その原因となったのはタイヤのトラブル。ダメージを負ったタイヤは本来のグリップレベルを発揮することができず、大幅なペースダウンとなってしまったのだ。
レースの3分の1を走りきっていないので、新田守男選手をピットに呼び戻してピット作業をすれば、どのみち大幅なタイムロスにつながってしまう。ベテランドライバーはその経験をフルに活かして、何とかラップタイムを2分3秒台まで戻し、ピットインのタイミングを待った。

最小となる16周終了時にピットイン、阪口晴南選手へのドライバー交代、タイヤ交換と燃料補給を済ませて、チームはマシンをコースへと送り出した。結果として最も早いタイミングでのピットインとなり、他の多くのチームはもう少し後のタイミングでピットへと向かう作戦だった。ピットインのタイミングが後ろになればなるほど、給油量が少なくて済み作業時間が短縮でき、また交換したタイヤの走行距離が短くなるので耐久性について楽になるのでペースアップできる。つまり、ペースが落ちていなければ、ピットインのタイミングは遅いほうが有利になる。
逆にいえば、給油量が多くなり作業時間が長く、交換したタイヤの耐久性をケアしなければならない状況で、阪口晴南選手は走り出したことになる。コースへ戻った順位は18位だった。
しかし20周目、#52スープラが単独スピンしてコースアウト、セーフティカー!まだ多くのマシンがピットインしていない状況で、タイムが大幅に短縮される。
すでにピットインを済ませたK-tunes 96号車は、そのロスタイムがほぼゼロになる!その時点で上位のマシンはほとんどがピットインしておらず、実質的な順位は6位となった。

再スタートは25周目。しかし阪口晴南選手のペースは上がらない。それは新田守男選手と同じようなタイヤトラブルを避けるため、タイヤをケアする必要があったからだ。タイヤへの負担を考えながらペースを抑え、そのままチェッカーフラッグを受けることが入賞するための最低条件だったからだ。
その後、33周目に5位へとポジションを上げたものの、それ以上のオーバーテイクは難しかった。結局5位でチェッカーフラッグを受け、今シーズン2度目の入賞を果たした。優勝したのは、やはり早めにピットインしていた#25アウディR8。セーフティカーまでトップを快走していた#61BRZはその速さを邪魔された形で12位となった。

コースレコードに迫る驚速の予選アタックから、タイヤをケアした決勝レースのペースコントロール。剛から柔へ、阪口晴南選手の若手らしからぬ技術が一際輝いたレースだった。

Photo Gallery