K-TUNES RACING

2020.7.18-19 富士スピードウェイまだまだ手さぐりの状態の開幕戦
それでも入賞あと一歩の11位を獲得

大規模イベントが次々と延期・中止される中、SUPER GTもまた、当初予定されていた全8戦の2020年シーズンは大幅に変更されることになった。スケジュール通りだったのは、シーズンの口火を切る3月の岡山国際サーキットでの公式テストだけ。その2週間後に予定されていた富士スピードウェイでの公式テストは、前日になってキャンセルとなった。

修正されたスケジュールはシーズンの様相を一変させるものだった。開催するサーキットは全国7つから、富士スピードウェイで4戦、鈴鹿サーキットとツインリンクもてぎで2戦ずつという、3つに限定する形となった。これは感染拡大防止策を実施しやすい大規模なサーキットを選択した、ということだろう。
K-tunes Racingとしては、地元・岡山国際サーキットでの開催がなくなってしまったのは、とても残念だ。
ただ冷静に考えると、3カ月遅れとはいえ、開幕戦が開催されることになったのは、それ自体で多くの労力を重ねた結果といえるだろう。感染拡大防止のため無観客となった開幕戦は、それでもドライバー、関係者、スタッフなどを合わせて1800人ほどが富士スピードウェイに集まった。

通常のSUPER GTとは異なり、プログラムは日曜日の午前中に予選、午後に決勝レースという、特別なスタイルとなった。これはポルシェカップやFIA-F4といったサポートレースが一切なく、SUPER GTだけの単独開催となったために可能になった。例えば予選でマシンに重大なダメージを負った場合に、決勝レースまでに時間が少ないので、修復が難しいということが起こる心配はあった。
K-tunes Racingにとって、今シーズンの大きなトピックスは、これまで使ってきたブリヂストンタイヤから、ダンロップタイヤへの変更だった。タイヤがレースを大きく左右することは明らかだが、実はメーカーによって特性が大きく異なる。そのため、一発の速さ、温度の影響、耐久性、温まりやすさ、ウエット性能など、結構違いが大きい。その特性を理解するためには、実際にマシンを走らせてドライバーがチェックするしか方法がない。

SUPER GTではチームが独自に行うプライベートテストは制限されている。これはコスト上昇を抑えるためだ。チームは限られた時間の中で、マシンのセッティングを見極めながら、タイヤのチェックを行う必要があった。つまり、ダンロップタイヤについてのデータを持っていないK-tunes Racingは、不利な情況にあった。
影山正彦チーム監督は、「チームとタイヤメーカーが、少しずつ理解を深めているところ」と語ってくれたが、それはつまりまだまだ距離があるということだろう。シーズンを戦い、チャンピオン争いに顔を出すためには、今回のレース結果そのものよりも、むしろタイヤのデータを入手することのほうが重要かもしれない。
2週間前に行われた公式テストでは、一発の速さが出せることを証明してみせた。次に必要なのは、安定した速さと耐久性ということになる。それはテストでは見えない部分であり、実際のレースという過酷な情況でこそ見えてくる部分だ。

日曜日の朝、富士スピードウェイは前日からの雨がわずかに残っていたものの、天気予報のような大雨ではなかった。路面は照らされた太陽の光で徐々に乾いていく情況で、気温もまた上昇傾向にあった。
予選Q1を担当したのは阪口晴南選手。まだ路面は乾き切らず、路面にはウエットパッチ(部分的に濡れている部分)が残った難しい情況の中、果敢にアタック。時間とともに路面情況が良くなっていくので、セッションが進みにつれてほとんどのドライバーがタイムアップしていく。阪口晴南選手もアタックを終えた時には6番手だったものの、最終的にはギリギリの8番手で予選Q2へ進出となった。
予選Q2を担当した新田守男選手もまた8番手となり、4列目からスタートという好結果となった。「こんなに緊張して慎重に走ったのは久しぶり。とにかくタイヤを痛めないように集中して走ったよ」と、走行後の新田守男選手は少し興奮気味だった。パフォーマンスに自信が持てなかった、まだ手さぐりのK-tunes Racingにとって、大きな朗報であることは間違いなかった。

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2020.7.18-19 富士スピードウェイまだまだ手さぐりの状態の開幕戦
それでも入賞あと一歩の11位を獲得

しかし午後の決勝レース、梅雨の合間の晴れた天気の中、予想以上に気温が上がってしまった。路面温度は40℃にも達しようとしていた。

今回使用できるタイヤは事前にチェックを受けたもので、その想定以上の気温になってしまったことで、タイヤのパフォーマンスと耐久性が懸念された。だが、それは逆にいえば、チェックしデータを得るための格好のステージでもあった。
レースは66周だが、GT300の場合は何度かGT500のマシンにオーバーテイクされるので、予想では62周。
スタートドライバーは新田守男選手となった。スタート時のタイヤは予選で使用したソフトなスペックであり、気温が上がったことで苦しい展開となることは明らかだった。それでも新田守男選手は、ベテランらしい走りでポジションをキープ。レースペースは苦しいものの、いきなりセーフティカーが出てペースが抑えられるといったシーンがあり、上位のマシンの脱落などもあり、16周目でも7位を走行。

そして9位となった20周目に、阪口晴南選手へとドライバーチェンジ。SUPER GTでは2人のドライバーに最小周回数と最大周回数について制約があり、このドライバー交代はそのギリギリのラインで、いくつかのチームも同じタイミングだった。
チームはミスなく作業を終え、マシンをコースへと戻した。タイヤはミディアムで、阪口晴南選手のレースペースは1分39秒前半と新田守男選手よりも0.5秒以上速く、上位のマシンはともかく、周囲のマシンと大きな差はなかった。ピットアウトした時に24位となったポジションは、他のマシンのドライバー交代もあり、少しずつ上がっていく。若いがレース経験豊富な阪口晴南選手は、レースペースもドライビングも、安定した走りをみせる。

「ほとんどオーバーテイクはしていないと思います」と阪口晴南選手は言うが、それでも 41周目には11位にまでポジションを回復させていた。セーフティカーの影響もあり、12位のマシンとの間には1分近くのタイムギャップがあった。しかし10位を走るアストンマーティンを捕らえることはできず、入賞&ポイントゲットにあと一歩届かず、62周のレースを11位で終えた。
レース後、影山正彦チーム監督は「ポイントが取れなかったのは残念だけど、晴南が40周以上のロングを走ったことで、貴重なデータが得られたし、レースを通じてダンロップタイヤのことをより深く知ることができたと思います。そういう意味では、次につながるいいレースだったど思います」と、次戦に向けて、手応えを感じたようすだった。
2020 AUTOBACS SUPER GT 第2戦は、開幕戦に引き続き静岡・富士スピードウェイで、8月8日(土)~9日(日)に開催される。今回同様に無観客だが、レースフォーマットは通常と同じ、土曜日に予選、日曜日に決勝レースという構成になる予定だ。

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