K-TUNES RACING

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2019.9.21-22 スポーツランドSUGO予選Q1敗退に始まった苦しいレース
雨の中で取り返して3位表彰台を獲得

ラス前というのは麻雀の用語で、一般的なルールでいえば南3局。勝負を大きく左右する重要な局面だ。リードしている者は逃げきり体制へ入り、早くアガッて場を回したい。負けている者は逆転するために賭けに出る必要があるし、もし親なら連チャンを狙って挽回したい。持ち点によって戦略がハッキリする場面でもある。

AUTOBACS SUPER GT 2019は、宮城県スポーツランドSUGOで第7戦を迎えた。最終戦直前の大事なレースだ。SUPER GTではウエイトハンデが与えられ、好成績を残したマシンの性能を低下させ、より多くの勝者を生み出すシステムになっている。しかしラス前では半分、最終戦はゼロとなり、チャンピオン争いの最終局面はコース上での決着を見ることができるようになっている。
K-tunes Racingは中盤以降、60kgのウエイトハンデによって苦しんできた。第6戦での入賞によってポイントは36ポイントへと上乗せでき、ウエイトハンデはレギュレーションに従い36kgへと軽減された。パワーよりもハンドリングでアドバンテージを持つRC F GT3にとってはウエイトの軽減は大きく、またSUGOのコースもマシン特性にマッチしており、レースを戦えるといった空気がチームを包んでいた。

それが現実であることは、土曜日の公式練習で明らかになった。阪口晴南選手がトップタイムをマークしたのだ。1分18秒178で、全くの同タイムで#61SUBARU BRZ R&D SPORTが並んだ。これまで8月に行われた公式テストでは5番手のタイムをマークしていたが、その後のマシンの細かなセットアップなどが実を結んだ結果といえるだろう。
K-tunes Racingの土曜日午前中は、とても明るい光が降り注いでいた。

しかし午後の公式予選、ストーリーは一変する。2組に分けて実施された予選、各組14台中8位以上でQ2進出となる。K-tunes RacingはB組となり、新田守男選手が担当した。コースインし、ゆっくりと慎重にタイヤを温める。そして最初のタイムアタックに入り、1分18秒991で5番手に入る。しかしまだタイムアタックに入っていないマシンもあり、そのタイムではQ2進出は難しい。新田守男選手はそのまま2度目のアタックに入ったものの、タイムを更新することができない。

結局、予選Q1はB組9位。8位に0秒203届かず、Q2進出はならなかった。そしてポールポジションを獲得したのは#61山内英輝選手で、1分16秒834というコースレコードだった。
残り2戦ということで、チャンピオン争いも佳境。K-tunes Racing #96は36ポイントで3位。トップは#55ARTA NSX GT3の41.5ポイント、2位は#88マネパランボルギーニGT3の36.5ポイント、4位には#56リアライズ日産自動車大学校GT-Rの35ポイントと、接戦になっている。#55は予選でも2位となり、#56が4位、#4が6位と、上位に位置している。苦しい展開になってしまった。
しかし希望は残っていた。それは決勝レースの天気予報が途中から雨だったからだ。LEXUS R F GT3というマシン、性能の高いブリヂストンのレインタイヤ、そして安定感のある2人のドライバー。予選18位という結果を一気に挽回するには、雨に期待する他はなかった。

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2019.9.21-22 スポーツランドSUGO予選Q1敗退に始まった苦しいレース
雨の中で取り返して3位表彰台を獲得

決勝レース。スターティンググリッドにマシンが並び始めたのを見計らったかのように、霧雨が降り始めた。朝から曇天だったサーキットは、天気予報よりは少し早めのタイミングで、そのまま雨が本格化するとは断言できなかったが、グリッド上ではスリックタイヤからレインタイヤへと交換するマシンが少なくなかった。
#96もレインタイヤへ交換したが、チャンピオン争いをしている上位陣もレインタイヤを選択した。しかし雨が止むと判断してスリックタイヤを選択するチームもあった。それが勝負の綾となる。

決勝レースがスタートする頃、霧雨は雨と呼べる量へと増えていった。セーフティカースタートとなり、4周目に正式なスタートとなった。そのスタート直前、セーフティカーランの最後の部分で、予選3位の#25HOPPY86MCはスリックタイヤだったため2位#55に付いていくことができず、そのままピットレーンに向かいタイヤ交換をする。ポールポジションの#61もスリックタイヤだったため、#55は簡単にトップに立ち、しかも2位へと上がってきた#56は#25に抑えられてていたため、15秒以上も後方に位置することになった。
チャンピオンを決める可能性もある#55は、運も味方して磐石のスタートを決めた。
しかし18番手からスタートした新田守男選手は、全力で追い上げていった。オープニングラップで12位まで順位を上げると、次の周には10位、さらに9位とポジションアップし、10周目には6位、19周目に5位、そして25周目には4位にまで上がる。レースペースは#55には届かないが、その差はわずか。トップに立つ可能性はあった。

36周目、レースは動いた。GT500のマシンがコースアウトしたのだ。
モニターに映し出されたマシンはサンドトラップの上で身動きが取れなくなっていて、空転するタイヤが虚しく砂をはね上げるだけだった。もしコースアウトしたマシンが衝突すると大きなクラッシュになるので、マシンはオフィシャルが移動させるしかないのだが、サンドトラップから引っ張り出すためには重機を使うことになる。それはコースアウトしたマシン以上に、大きな脅威になる。
セーフティカーが入るに違いない!そう想像するのは無理のないことだった。ライバルたちはすぐにピットに入っていく。しかしK-tunes Racingは動かない。
降水量によってレインタイヤの選択は分かれる。雨量が多ければ発熱しやすいソフト、少なければ耐久性の高いハード、スタートから装着していたのはその中間のミディアムだった。どのレインタイヤを選択するべきなのか?K-tunes Racingは決断することができず、ピットインさせるタイミングを逃してしまった。

「セーフティカー!」場内実況が叫ぶ。それは96号車がピットストップ1回分、約1分ものハンデを負うことが決まった瞬間だった。ヘルメットを被りすぐさまマシンに乗り込める体勢で待機していた阪口晴南選手は、頭を垂れ、両手で抱えてしまった。
5秒…、10秒…、15秒。阪口晴南選手が顔を上げるまで、ピットの中ではストップウォッチ以上の時間が流れていた。さまざまな想いを断ち切りレースへ向き合うために、費やす時間が必要だったのである。
暫定的にトップに立った96号車は、セーフティカーが解除された次の周、42周目にピットストップを行い、新田守男選手から阪口晴南選手へとドライバーチェンジした。それにより、#55には周回遅れに近い約1分7秒という差となり、順位は7位にまで下がった。
しかしそこからが阪口晴南選手のレースだった。コース上の誰よりも速いペースで走行を続け、タイム差を削っていく。雨量が強まるシーンもあり、タイムそのものは前半よりも低下したものの、その中で前を走るマシンとの差を1周で2秒、3秒という単位で削り取り、ポジションを上げていく。
53周目に5位に上がり、68周目には#56を、69周目には#65をオーバーテイクして3位にまでポジションを戻した。43周目に存在した#65とのタイム差、58秒706を26周で逆転してみせたのだ。雨の中を攻める阪口晴南選手の姿に、多くの視線が集まっていたのはいうまでもない。

しかしトップの#55、2位の#4との差は大きく、届かなかった。K-tunes Racingにとって3位表彰台はチーム初であり、2戦連続のポイントゲットを果たした。しかし#55が優勝した61.5ポイントとなり、#96は47ポイントとしランキング2位となったもののポイント差は拡大した。K-tunes Racing #96は少なくとも2位以上でなければダメで、逆に#55は6位以上でチャンピオンが確定する。
最終戦は11月2日(土)~3日(日)、栃木県ツインリンクもてぎで開催される。

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