K-TUNES RACING

2020.11.23 富士スピードウェイ今シーズン初参戦にも関わらず
1位&2位とクラストップの速さをみせる

第3大会が行われたのは11月23日。鈴鹿サーキットで初開催となった第2大会から約4カ月ぶりに富士スピードウェイで1dayイベントとして開催された。

1dayでの開催はタイムスケジュールこそタイトになるが、開幕戦でも経験済みとあってチームにとってさしたる問題ではない。ただし、本来2日間で2レースをこなすのが通例となっているジェントルマンクラスにおいては、1日ですべての勝負が決まるため、レースの緊迫度や戦術、マシンとドライバー自身のコントロールも含め、いつもよりも難易度が高くなるのは自明と言えるだろう。
予選はジェントルマンクラスから始まった。第1大会、第2大会とも欠場を余儀なくされた末長選手にとっては、この第3大会が2020年シーズンの初戦である。しかし前日、そして朝の練習走行で好感触を得ていたこともあり、過度な緊張や気負いもなく、リズムに乗った走りで徐々にタイムを上げていった。ところが3周ほど周回したところで赤旗によって予選が中断。はたから見ればペースを掴みかけていたところに水を差された状況だが、中断による影響はほとんどなく1分50秒460、1分48秒938とタイムを上げ、8周目に1分48秒753をマークし、結果としてGクラスの2番手、総合でも5番手につけた。予選後末長選手は、「(中断によって)リズムが途切れてしまいましたが、うまくリカバリーできました。久しぶりのレースだし、ブランクがあるなかでこのタイムは悪くないと思います」と振り返った。

決勝レースは、プロと同じ形式となる。まず6周の第1レースが行われ、5分のインターバルのあと8周の第2レースとなる。
第1レースを第2レースに向けた様子見と捉えるドライバーは少なく、スタート直後から激しい順位争いが展開される。そのなかで末長選手は5番手をキープしながら、前を行く#37大蔵選手と#32永井選手を僅差で追っていく。上位6台が等間隔でレースのままレースは進んでいくが、3周目のコカ・コーラコーナーで#55寺川選手と#32永井選手が接触し、そのあおりを受けて#37大蔵選手もコースアウト。前を行く3台のアクシデントをうまくすり抜けた末長選手はポジションを2番手に上げた。

2番手となった末長選手はトップの#44山口選手を追う展開となる。後方にはコースアウトから復帰した大蔵選手が0.369差で迫ってくる。第2レースを有利に展開するという意味でもこのポジションはキープしたいところだったが、5周目、1コーナーでは大蔵選手をうまく抑えたもののコカ・コーラコーナーで先行を許してしまう。ポジションを3番手に落としたものの、その後は果敢に前を追う走りが功を奏し、4番手の#3フライングラット選手に対して3.286秒の差をつけ第1レースはフィニッシュとなった。
「目の前でアクシデントがありましたが、それをうまく回避したあとは、いいペースで走ることができました」と、自分のリズムを崩すことなく3番手を維持できたことで、第2レースに向けていい手応えを感じることができた。

5分のインターバルを挟んで行われた第2レースは、3番手からのスタートとなった。「序盤は第1レースのリズムをうまく引き継いで走れていた」と、末長選手は3番手をキープしながら前を行く大蔵選手を追っていく。レース全体としては、波乱のあった第1レースに比べると落ち着いた展開で周回を重ねていたが、4周目に入ると俄然動きが活発になり、末長選手の前方ではトップ争い、さらに後方では4位争いが激しさを増していった。
周囲の状況を見ながら、冷静なレース運びをしていた末長選手だったが5周目のコカ・コーラコーナでフライングラット選手に先行を許してしまう。直後に寺川選手にも仕掛けられ、これをうまく凌いだが、ダンロップコーナーで捕らえられてしまう。
「始めのうちはいいペースで走れていたんですが、残り4周になった頃にタイヤの状態が厳しくなってきたと同時に、体力的にもきつくなってきてペースダウンしてしまった。レースが久しぶりなうえに2レース連続という初めての経験も重なって、コントロールすることが難しい状況でした」(末長選手)

その後は#16渡邊選手が0.463秒差まで迫ってきたが、これを退けて5番手を維持したままチェッカーを受け、総合5位、Gクラス2位で見事表彰台を獲得することになった。
「エキスパートのドライバーに抜かれはしましたが、Gクラスのなかでしっかりと順位を残そうと心がけて、それを達成できたことには満足しています」と語る。自身の置かれた決して楽ではない状況やコンディションのなかで、やれることを成し遂げたことは称賛に値することといえる。

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2020.11.23 富士スピードウェイマシンコンディションに苦しんだものの
第2レースでは4位までポジションを上げる

前日のフリー走行では、マシンのバランスを確認し、調整を行っていたが、いざ計測に挑むと3周目に1分47秒535、4周目は1分49秒734と、思うようにタイムが上がらない。

最終的には1分45秒515をマークするが、中山選手としては「このクルマをどうやって走らせれば、富士でタイムが出せるかは経験値でわかっているんですけど、そこにもっていくことができなかった」と、満足できるものではないようだった。グリッドこそ7番目だが、2番手以降は45秒台であることからも、決して悪くない結果に思えるが、「僕としては“これしか出ていない”という印象でした。ただ、マシンのバランスがよくてこのタイムだったらまったく手の打ちようがありませんが、状態がよくないことがわかったうえでの結果なので、改善したうえで決勝に挑みたいです」と語っていた。

8周で行われる第1レースは、ポールシッターの#37福住選手を先頭に、グリッド順のまま周回を重ねていく。中山選手は後方から#8宮田選手に1周目の最終コーナーで仕掛けられるが、これをうまく凌いで7番手をキープしていく。3周目、4周目も同様の展開で進んでいくが、次第にトップ争いが激しさを増していく。そんななか中山選手は、あくまでもポジションキープという冷静なレース運びを見せる。追いすがる宮田選手から攻められる場面もあったが、「第1レースだし、宮田選手も無理してこなかったので焦りはまったくありませんでした」(中山選手)。
しかし、予選から感じていたマシンに対する懸念は拭いきれておらず「いっぱい、いっぱいだった」と厳しい状況にあったことをレース後に吐露している。それでも1分46秒台のタイムで周回していった。第1レース終盤、中山選手の前では#32坪井選手、#44平川選手、#3阪口選手の4番手争いが熾烈を極めていたが、それを見ながら「2レース目に向けてタイヤを温存する方向に切り替えました」と、周囲の状況、マシンの状態を鑑みた中山選手らしいクレバーなレースを展開。結果として第1レースは7位のポジションをキープしてフィニッシュとなった。
間髪入れずに行われた第2レース。中山選手はスタートを無難に決め、後続をうまく抑えながら前を行く阪口選手を追う。第1レースはあえて無理をせずタイヤを温存し、2レース目で勝負をかけるのはインタープロトの戦いにおける定石であり、中山選手もこの点は熟知している。

そして2周目。TGRコーナーで阪口選手に仕掛ける。「後ろから見ていて1周目からペースが遅くて、乗りづらそうな感じに見えて いたので、ここはチャンスだなと思った」中山選手は、TGRコーナーでは抑えられるもののダンロップコーナーで見事にかわして順位を6番手に上げる。4周目には5番手を走っていた坪井選手がマシントラブルでスローダウンし、労せず5番手にポジションアップを果たす。
5周が終わった時点で順位は5番手。前を行く平川選手との差は2.376秒と、上位進出を望むには決して楽な展開ではないが、前では#55関口雄飛選手と#16ロニー・クインタレッリ選手、平川選手の2位争いが激しさを増していく。そして7周目、一度はロニー選手を抜いて3位に上がっていた平川選手にマシントラブルが発生。中山選手はさらに順位を上げる。

そして7周目が終わったところで、ややペースの落ちたロニー選手との差は0.160秒まで縮まり、ファイナルラップに入る。ここからはタイヤを温存してきた中山選手有利の展開が続いていった。残り1周、中山選手はTGRコーナーからすべてのコーナーでロニー選手のテールに食らいついていく。「自分のほうがタイヤの状態がいいから、イケると思ったのですが直線の伸びがよくない」(中山選手)。転がり込んできたチャンスを手中に収めるべく果敢に攻めたものの相手も百戦錬磨の猛者とあって簡単には攻略させてくれない。「あと1車身前でブレーキが踏めれば勝負するところまでいけるんですけど、どうしても真後ろでのブレーキになってしまうのでロニー選手のブロックをかいくぐることができなかった」(中山選手)。

攻めてはいたが、「直線での伸びやコーナーでもう少し曲がってほしい(中山選手)」といった、マシンの足りない部分が影響して攻めきれなかった。しかし我慢の走りが功を奏し、7番手スタートから着実に順位を上げて4位でのチェッカーを受けることとなった。この結果について中山選手は「棚ぼた」と謙遜していたが、自身のレース巧者ぶりがあってこそであるのは言うまでもない。中山選手曰く「マシンの状態が楽観できない状況下にある」のは事実だが、これをポジティブに捉えるならば、チームとして伸び代があり、さらに上を目指せる可能性が大いにあることの証明と言えるだろう。次戦、さらなる飛躍に期待したい。

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コメント

  • 末長一範
    Gentleman Driver末長一範

    「今シーズンは自身として初戦だったわけですが、予選のタイムも、決勝もよかったと分析しています。 第1レースは、目の前で起きたアクシデントをうまく回避して順位を上げて、ポジションをキープすることができました。ただ第2レースでは終盤になってタイヤが消耗してペースが落ちてしまった。そういった状況になっても、それをカバーできる運転技術やペース配分をしっかりと身につけていきたいですね」

  • 中山雄一
    Professional Driver中山雄一

    「(マシンの)不足している部分を完全に改善するには、今あるものをいったん崩してから違うアプローチで詰めていかなければならない可能性があり、非常に難しいことではありますが頑張っていきたいです。最終戦は、1月にレースをするということで未知数な部分もありますが、今シーズンやってきたなかで全然違うコンディションで行うレースなので、これまでとは違う戦いをしたいです」

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