K-TUNES RACING

2020.10.17-18 岡山国際サーキット3人のジェントルマンドライバーがプロとコンビを組み
まるでSUPER GTレースのように、86を走らせた

10月18日、岡山国際サーキットは岡山チャレンジカップ第7戦が開催された。K-tunes Racingは3台のN1仕様トヨタ86と、6人のドライバーを送り込んだ。

当初は年間8大会がスケジュールされ、そのうち5大会で86参戦レースが設定されていた。しかしモータースポーツにも自粛の波があり、いくつかの大会が中止になってしまっていた。K-tunes Racingとしては2月の第1戦には参戦したものの、それ以降レース参戦することができなかった。
今回の第7戦は、10周で行われる通常のスプリントレースではなく、2時間耐久レースとなっている。この2時間耐久というフォーマットは岡山チャレンジカップでは年間2回行われるもので、最低2回以上のピット作業をする必要があり、ドライバー交代もある。いわばSUPER GTのようなレースになっているわけだ。

岡山チャレンジカップは、岡山国際サーキットが主催している独自のレースシリーズで、アマチュアドライバーからエキスパートドライバーまで楽しめる、さまざまなレースが設定されている。1991年にスタートし、西日本のレーシングドライバーたちを育てきた歴史あるレースシリーズだ。
その中にはトヨタ86を使うレースも、トヨタ86がデビューした2012年から早々とプログラムされている。
じつはK-tunes Racing誕生のキッカケは、その岡山チャレンジカップへの出場だった。いわばK-tunes Racingの原点といえるレースなのである。そして2012年の初参戦以来、K-tunes Racingは岡山チャレンジカップに参戦を続けている。
マシンはトヨタ86を、N-1という規定に従ってレース専用に改造したもの。外観は大きなウイング以外は目立たないが、室内はほとんどの内装材が取り外され、シートもバケットシートがひとつだけ。当然ナンバーは付かない。またタイヤは、溝のないスリックタイヤを使用するのも、86/BRZのワンメイクレースとの違いだ。

岡山チャレンジカップに参戦するジェントルマンドライバーは3人。2019年から参戦している野上昌範選手と藤井大温選手、そして今回がレースデビューとなる永井良周選手。野上選手も藤井選手も、レースへの参戦経験は他にはなく、まだまだスキルアップする途中といった状況だ。
そして今回の2時間耐久、パートナーはK-tunes Racingファミリーのプロドライバーが担当することになった。野上選手にはインタープロトシリーズに参戦している中山雄一選手、藤井選手はSUPER GTのチーム監督である影山正彦監督、そして永井選手のデビュー戦をサポートするのは新田守男選手、という何とも豪華な布陣。3人のジェントルマンドライバーは、それぞれパートナーとなるプロドライバーと一緒にレースを戦うという楽しみだけでなく、さまざまなアドバイスを得ることがドライバーとしての進化につながることは間違いない。
実際、ピットではプロドライバーからのアドバイスに耳を傾け、疑問点を質問したり、レースの実戦だからこその緊張感の中、コミニュケーションが濃密だった。

午前中の予選、2人のドライバーともにタイムアタックを行い、速いほうのタイムが採用される。当然プロのタイムが予選タイムとなるわけだ。#14中山雄一選手がコースレコードでポールポジションを獲得。#19新田守男選手もそれに続き2位となり、K-tunes Racingがフロントローを独占することになった。#36影山正彦監督はクラス5位からのスタート。
レギュレーションで2回のピット作業が義務付けられていて、その間にドライバー交代やタイヤ交換を行うことができるのだが、1回のピット作業は3分以上という最小時間設定があるのが特徴的。つまり焦ってピット作業する必要はなく、むしろ早くコースに戻ってしまうとペナルティの対象となってしまう。
スタートドライバーはそれぞれ、#14野上選手、#19新田選手、#36藤井選手ということになった。デビューレースで緊張している永井選手の負担を軽減するため、他のマシンと異なり、スタートドライバーをプロが担当する形になったのだろう。

決勝レースは#14野上選手のポールポジションを制し、2番グリッドからスタートの#19新田選手が1コーナーへトップで入り、1分47秒台のハイペースで一気に引き離しにかかる。3人のジェントルマンドライバーの中で最もラップタイムが速い#36藤井選手は1分50~51秒のペースでクラス3位にポジションを上げていく。ポールポジションスタートだった#14野上選手はクラス4位となり、しかし1分52~53秒のペースだが安定した走りを見せていた。
スタートから40分が経過したところで、まず#14野上選手がピットに入り、中山選手へと交代。その2周後、#36藤井選手から影山監督へと交代する。その2人のプロドライバーは、1分48~49秒のペースで周回。トップを走る#19新田選手を追うが、その差はまったく縮まっていかない。
1時間が過ぎようとしていた30周目、トップの#19新田選手が永井選手へと交代。いよいよデビューレースの決勝が始まった。

じつは午前中の予選、1分54秒320というタイムを出し、これまでの練習でマークしていた自己ベストを大幅に更新していた。単独走行では可能だったタイムだが、周囲に一緒に走るマシンがあり、ペースが異なる場合も多く、実際の決勝レースでは思ったように自分のペースを作れない。結果として2分00秒台のラップタイムで走行することに。
それでも大きなミスもなく、17周を走って新田選手へとバトンを戻すことに成功した。順位はクラス5位となっていたが、それでも自分の走行パートを無事終えて、永井選手はホッとした表情だった。
「いつも通り、練習通りのことができなかったですね。練習の成果を出すというのは難しいものなんですね。いい勉強になりました。他のクラスの遅いペースに合わせてしまったり、速いクルマには譲ることを考えていたので、どうしてもペースが上がりませんでした。次のレースでは予選のようなペースで、今日よりも5秒くらい速いペースでレースしたいですね。レースに参加してみて、1秒の大切さが、本当に判りました」

トップを快走していた#14中山選手は46周目に、残り20分ほどで野上選手へとスイッチ。しかもピット作業を終えても、トップは維持したままだった。また#36影山監督は52周目に藤井選手へと交代した。ラストスパートは、それぞれのジェントルマンドライバーが担当することになった。
しかし3位から追い上げてき#86阪口良平選手がペースに勝り、その差は着実に詰まっていった。そして残り10分、#14野上選手はオーバーテイクを許し、2位へ。しかし、表彰台に立つことができた。
「いやぁ、課題は多いですね。まだまだです。次のレースの前までには、しっかりと練習して、臨みたいですね。モータースポーツはタイムという記録がしっかり出るので、それを超えたいという気持ちが出て来て、チャレンジするというか、そういうところがボクにとっては楽しいですね」
本来の速さでいえばエースとなるはずだった#36藤井選手は、最後のセッションはタイムを上げることができず、4位でフィニッシュとなった。
「今日はミスはあまりなかったんですが、思ったようには走れませんでしたね。練習の時は良かったんですが、路面コンディションが変ってしまったのか、全然上手く走ることができませんでした。クルマって毎日乗るものですけど、モータースポーツというのは非日常的ですよね。そこが楽しいですね」

次戦、岡山チャレンジカップ第8戦は、12月6日(日)に開催される。その今シーズン最終戦は、2時間耐久ではなく、10周のスプリントレースとして行われる。

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